最初のリハビリ

サイレントマニュピレーションを受けて2日が過ぎ、腕の麻酔もようやく切れ、自分の意思で動かせるようになった。ここからリハビリが始まった。

理学療法の先生から以前から教えてもらった運動をやってみると、明らかにサイレントマニュピレーションを受ける以前と違う。まず可動域がぜんぜん違う。肩をゆっくと動かすとじわ~と関節包が広がる感覚が確かにあるのだ。施術前に、動かせるようになったらとにかく動かすようにと指示された。関節周りが一時的に柔らかい状態になるから、そのうちに可能な限り可動域を広げる、もちろん痛いと感じる動作は禁止された。とにかく教えてもらったリハビリをすると全ての動作で肩関節周りにじわ~とした感触を感じた。そして残念なことに、可動域自体は以前と比べ物にならないけれど、ケガの影響を感じる範囲でしか動かせなかった。それ以上に動かそうとすると痛みが強く、できないと感じた。

サイレントマニュピレーションを受けて最初のリハビリで感じたことは「医学ってすごいな」だった。ようやくリハビリのスタートに立てたと思った。それぐらい私の凍結肩は重症だったのだ。

以前とは比べ物にならない可動域と動かすとじわ~と何かが広がる感覚、病院に通いだしてから初めて希望を感じた瞬間だった。

 

 

サイレントマニュピレーション当日の続き

サイレントマニュピレーションが終わり、麻酔の予後も無事に問題なく帰宅となった。麻酔で片腕が全く動かないので家族に迎えに来てもらい、病院帰りに処方された痛み止めをドラッグストアに買いに行った。ここですでに違和感があった。施術を受けた右肩がズキズキと痛いのだ。医者の説明では、処置を行うための麻酔は効果時間が短く、処置後に打った麻酔がオーバーラップするように後から効いてくる・・・らしいのだが、明らかに痛い。先生、麻酔の時間オーバーラップしてなくないですか?

痛いことは痛いのだが、鋭い痛みではない。ズキズキと鈍い痛みが繰り返される。三角巾で固定された状態が余計に痛みを引き出すらしく、帰宅前に車の中で早々に外した。多少は楽になったがそれでも痛みがあるので、伝家の宝刀「食べてごまかす」を発動。痛みで夜に寝られない場合を想定し、近所のスーパーへ行って好物をひたすら買い込んできた。食べる快感で脳を騙しながら眠くなるまで夜ふかしをする作戦だ。結果的に上手く行ったのか、就寝段階ではスムーズだったが夜中に痛みで起きてしまうことが2,3度あった。サイレントマニュピレーションを受ける前に夜間痛は苦しんでいたので、慣れはあったかもしれないが、思ったより痛くないというのが正直な感想だった。

問題は麻酔の効果時間のほうだった。医者の説明では一晩で動くようになると聞いていたが、一晩どころか24時間が過ぎても腕が思うように動かなかった。この辺は個人差があるのかもしれない。麻酔で腕と肩が動かせないとわかっていても、施術が失敗したのではないかと不安になるほと動かなかった。次の日の朝になると麻酔の効果が切れたようで、やっと自分の意思で腕が動かせるようになった。施術当日こそ夜間痛があったが、麻酔の効果が予定より長かったのか、その後は痛みらしい痛みはあまりなかった。

腕の麻酔も切れ、ようやくサイレントマニュピレーション後のリハビリを始めることができるようになった。この時点で、サイレントマニュピレーションを受けてから2日間が過ぎていた。

サイレントマニュピレーション体験談、施術

重度の凍結肩と診断された私はサイレントマニュピレーションを受けることになった。

サイレントマニュピレーションとは肩に麻酔をして強引に癒着した関節包を破る施術、私はそう理解している。詳細は専門家の医師がネット上でたくさんしているので素人解説はこの程度にしておこう。間違って理解しているかもしれないのでその点は素人のいち患者なのでご容赦願いたい。

さてサイレントマニュピレーション当日の注意点は肩に麻酔をする以上、病院からの帰りは全く腕を動かせない点だろう。とくに私のように田舎の車社会だと要注意だ。私の場合は家族に送迎してもらった。血圧を計ったあと、エコー診断で肩の神経にブロック注射をした。注射の痛みはあるが大した痛みではない。注射後、呼吸器に問題が起きる可能性があるらしく、麻酔がきくまで20分ほど安静にした。私は呼吸に問題はなかったが、注射をした右肩のほうの顔が少し痺れを感じ、そのうち自分の意志は全く右腕全体が動かなくなった。麻酔の効きを確かめたあと、いよいよサイレントマニュピレーションを始まった。

ベッドに寝た私の右肩を先生が動かす。これまで半年以上も全く動かなかった右肩から異様な音がする。まるでダンボールを破るようにビリビリ、バリバリと音がなる。麻酔をしているので痛みは全く無い。先生が肩の動作を確認しながら順番に動かしていく。どうやら関節包を破る?動作にもの手順があるようだった。サイレントマニュピレーション自体は一瞬だった。10分もかからなかったと思う。終わったあと、先生が肩を確認しながら動かす。まるで自分の肩ではないように、怪我をする前と同じ、いや下手をするとそれ以上に可動域で肩が動く。健康が一番大事、そんなセリフが頭の中を反芻した。

この時点で肩周りは全然痛くなかったのだが、内旋、外旋の動作に多少の痛みを感じた。肩の麻酔とは関係のない神経が動作に関係しているのだろうか?多少の疑問はあったが、こうして私のサイレントマニュピレーションは終わった。施術後の痛みを緩和するための注射を打ち、三角巾で右腕を固定、麻酔による急な溶体の変化を避けるため30分ほど安静にして帰宅した。病院での待ち時間を含めて全部で2時間ほどの施術だった。

リハビリ開始とその結果

凍結肩と診断された私は新しい病院でリハビリが始まった。以前の医者は注射やリハビリなどの指導は一切なく、痛みがあるから動かすなという指示だけだった。それに対し、新しい病院ではリハビリ前にエコー診断で注射を打ってもらった。この注射によるものかわからないが、リハビリ時には痛みが少なく関節の可動域も多少の改善傾向があった。このようなリハビリを1ヶ月続けたところ、最初よりは全体的に改善したが一定段階から変化が少なくなった。2ヶ月がすぎる頃にはリハビリの進捗がほとんど見られず完全な足踏みとなってしまった。先生からリハビリの回数を週2回に増やすよう言われたが3ヶ月が過ぎても大きな変化はなかった。もちろん、家でのリハビリをサボったつもりはない。ただ絶対的な痛みと進捗のない結果を前に、取り組む気力は奪われていたと思う。3ヶ月が過ぎたころ医師からサイレントマニュピレーションを受けたほうがいいと言われた。先生曰く、「程度が悪い凍結肩だからリハビリを中心とした保存療法では難しい」と最初の診断でも説明を受けていた。私は二つ返事でサイレントマニュピレーションを受けると答えた。このままでは本当に一生方が上がらないかもしれない、そんな恐怖が私の中にあった。もちろん、最終的には内視鏡手術という選択肢があることも知っていたが、入院を含むこの手術は仕事を考えると選択しづらかった。サイレントマニュピレーションは当日から翌日にかけてこそ生活に影響があるが入院もなく保険適用の施術だ。私にはありがたい選択肢だった。

結果的に、3ヶ月のリハビリによる保存療法では回復には至らなかった。これは私の凍結肩が重度だったことが原因で、通常ならば私のように40歳の若さだったらこれでも十分な結果になるらしい。もっと早く病院を訪れていれば、後悔はいつでも後でするものだ。そんな私がこの先にさらに後悔しないためにも私はサイレントマニュピレーションを受けることにした。

凍結肩

セカンドオピニオンを求めた病院でエコー診断を受けたところ、最初の医師同様に腱板損傷ではないと言われ、凍結肩と診断された。凍結肩とは長い間動かさなかった肩関節周りが癒着して固まってしまい、肩の可動域に問題が生じている状態を指すらしく、いわゆる四十肩や五十肩と呼ばれるものらしい。ただし、私の場合は加齢によって起きたのではなく怪我によって結果的になってしまった。

医者から提案された治療はリハビリによる保存療法で3ヶ月間が目安らしい。ただし現状でかなり重度の凍結肩なのでサイレントマニュピレーションも視野に入れると説明された。サイレントマニュピレーションとはリハビリでは効果の少ない凍結肩の患者に対して行われる施術で、肩に麻酔をして強引に癒着した組織を引き剥がす荒業らしい。聞いただけで痛くなる方法だが効果が高いことも想像できた。

このブログで書くのは、このサイレントマニュピレーションを受けたあとのリハビリと治療の軌跡だ。そう、残念ながら私の肩はリハビリの効果が薄く、前述した医者の初診から4ヶ月後にサイレントマニュピレーションを受けることになる。

きっかけ

きっかけは些細なことだった。寝起きに右手をついて身体を起こすときに肩に激痛が走った。びっくりするくらい痛くて低血圧の私が思わずのたうち回った。

急性の痛みだったので2~3日もすれば多少はマシになった。しかし、右手で特定の動作をすると痛みが走るようになってしまった。なるべくそのような動作を避けていると、だんだんと肩の動きそのものがおかしくなってきた。

最初に痛みを感じてから1ヶ月後、私は近所の整形外科を訪れた。レントゲンを見た医師の診断は、さらに1ヶ月ほど痛みを感じる動作を避けて安静にすように言われた。ここできちんと1ヶ月後に再診してもらえばここまでの大事にはならかったのかもしれない。しかし、医師の診断結果が軽いと勝手に勘違いした私は仕事の忙しさもあってたっぷり2ヶ月以上が過ぎてから病院を訪れた。そこで医師からはこっぴどく叱られた。医師の当初の考えでは再診次第でより重度の怪我もありうると思っていたらしい。そんな思いを知らなかった私は、結果的に適切な治療期間を過ぎてしまったのだ。

その時点で私の右手は90度以上上げることができなくなっていた。医師は腱板損傷を疑いMRI検査を受けた。幸いなことに腱板は損傷しておらず、重度の凍結肩との診断になった。

この時点で私はこの整形外科の先生に多少の不信感を持っていた。自分の勝手な判断は認めるにしても、治療方針についての説明は一切なく、MRIもない病院だったので外部の地域の中核病院を利用したせいで余計な日数と手間がかかった。また、ここまで複数回訪れてもただの一度も注射はおろか薬すら出してもらわず、ただ触診による診察だけだった。

このままでは本当に一生右手が上がらないかもしれない、そんな不安に襲われた私はセカンドオピニオンを求め、最新の機器を揃えた評判の良い整形外科を訪ね、今の治療状態にたどり着いた。怪我をしてから5ヶ月が過ぎていた。