きっかけ

きっかけは些細なことだった。寝起きに右手をついて身体を起こすときに肩に激痛が走った。びっくりするくらい痛くて低血圧の私が思わずのたうち回った。

急性の痛みだったので2~3日もすれば多少はマシになった。しかし、右手で特定の動作をすると痛みが走るようになってしまった。なるべくそのような動作を避けていると、だんだんと肩の動きそのものがおかしくなってきた。

最初に痛みを感じてから1ヶ月後、私は近所の整形外科を訪れた。レントゲンを見た医師の診断は、さらに1ヶ月ほど痛みを感じる動作を避けて安静にすように言われた。ここできちんと1ヶ月後に再診してもらえばここまでの大事にはならかったのかもしれない。しかし、医師の診断結果が軽いと勝手に勘違いした私は仕事の忙しさもあってたっぷり2ヶ月以上が過ぎてから病院を訪れた。そこで医師からはこっぴどく叱られた。医師の当初の考えでは再診次第でより重度の怪我もありうると思っていたらしい。そんな思いを知らなかった私は、結果的に適切な治療期間を過ぎてしまったのだ。

その時点で私の右手は90度以上上げることができなくなっていた。医師は腱板損傷を疑いMRI検査を受けた。幸いなことに腱板は損傷しておらず、重度の凍結肩との診断になった。

この時点で私はこの整形外科の先生に多少の不信感を持っていた。自分の勝手な判断は認めるにしても、治療方針についての説明は一切なく、MRIもない病院だったので外部の地域の中核病院を利用したせいで余計な日数と手間がかかった。また、ここまで複数回訪れてもただの一度も注射はおろか薬すら出してもらわず、ただ触診による診察だけだった。

このままでは本当に一生右手が上がらないかもしれない、そんな不安に襲われた私はセカンドオピニオンを求め、最新の機器を揃えた評判の良い整形外科を訪ね、今の治療状態にたどり着いた。怪我をしてから5ヶ月が過ぎていた。